薬の知識
 
Knowledge of Drugs


添付文書の読み方


  添付文書は,その薬の使い方,注意事項,特徴などを記載したもので,薬と共に箱に入っています。薬店やコンビニなどで売っている薬はほとんど箱入りで,その中に一般の方々が理解しやすい内容をまとめた添付文書が入っています。しかし,医師の処方箋にもとづき病院や薬局でもらう薬は,その処方箋に記載してある量の薬だけを袋に入れてくれるので,その添付文書は入っていません。ここでは,その医療用医薬品の添付文書(以下「添付文書」)の内容について簡単に説明します。
  添付文書は,2019年4月からその記載事項の改訂作業が順次進んでいて,2024年3月末日までにはすべての添付文書が新しいタイプのものになる予定です。とは言え,内容が大きく変わるのではなく,今までの内容を細分化して,あるいは統合して,読みやすく,わかりやすい構成にするということのようです。新しい添付文書の各見出しには数字が振ってあり1から26までありますが,その薬にとって該当しない見出しは記載する必要がないので,薬によっては見出しの番号が飛んでいる場合があります。添付文書は,PDF版,HTML版,およびXML版をPMDA(医薬品医療機器総合機構)のホームページから入手できます。ここでは,その新しいタイプの添付文書のPDF版を例にとって解説します添付文書の入手方法はこちら)。
  添付文書(PDF版)の1ページ目の最上段には,その薬の名称,主成分名,薬の分類名,保存方法(貯法),有効期限などが表示してあって,その下から数ページにかけて,見出しごとに薬の使い方,注意事項,および特徴についての情報が載っています。
  まず,見出し「1. 警告」です。ここは赤色の文字で,絶対に守るべき最重要事項を記載します。この記載がある場合は,そのページ(1ページ目)の右上角が赤色になっています。この警告を必要としない薬は,つぎの「2. 禁忌」から始まります。 
  「2. 禁忌」は,この薬を使うと,逆に病気が悪化してしまうことがある人をリストして赤枠で囲ってあります。 
  「3. 組成・性状」では,薬の成分や見た目などの形を説明しています。 
  「4. 効能又は効果」には,薬が効く病気または症状が載っています。 
  「5. 効能又は効果に関連する注意」には「効能又は効果」の病気や症状であっても注意が必要な場合は,その旨を説明しています。
  「6. 用法及び用量」には,1回に飲む薬の量と,それを1日に何回飲むかなど,基本的な飲み方を記載しています。
  「7. 用法及び用量に関連する注意」には「用法及び用量」の基本的な飲み方を変更する際の注意点などを記載しています。
  「8. 重要な基本的注意」には,重大な副作用が起こらないようにするためにはどうしたらよいか,あるいはもし起こった場合はどうするべきかについて説明しています。
  「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」には「効能又は効果」に載っているもの以外の病気や症状を併発している人や,妊婦,授乳婦,小児,高齢者などの皆さんとって注意を要することがある場合は,その旨を記載しています。
  「10. 相互作用」には,他の薬と併用することで両方の薬あるいは片方の薬の効果が強くなったり弱くなったり,または副作用が強くなったり,新たな副作用が発現したりすることがあるので,併用してはいけない薬や,注意して慎重に併用する必要があるものを記載しています。また,薬ではなく飲み物や食べ物を記載している場合もありますので,注意して見ておくほうがよいでしょう。
  「11. 副作用」には,重大な副作用とそれ以外の副作用を分けて記載しています。また,その副作用がどれくらいの頻度で発現するかについてもパーセント表示しています。ただ,ここに記載してある副作用は,添付文書を作成した日あるいは改訂した日より前に得た情報にもとづいていますので,ここに載っていない副作用が新たに起こる可能性はあります。よって,皆さんが薬を服用し始めてから発現した症状がここに載っていないものでも,その症状は今まで誰も経験していない新たな副作用かもしれませんので,医師または薬剤師に相談することをお勧めします。
  「12. 臨床検査結果に及ぼす影響」には,薬を服用した後で起こる臨床検査値の変動で,病気などの臓器障害とは関係ないものについて記載しています。
  「13. 過量投与」には,薬を大量に使用した際に出現する中毒症状やその処置方法が載っています。ただ,そのような情報は,自ら薬を大量に使用するといった事故によって入手できるものですから,この項目は載っていない添付文書がほとんどです。その場合「13」は欠番になります。
  「14. 適用上の注意」には,医師が患者さんに使用するときに注意すること,薬剤師が調剤する際に注意すること,あるいは患者さんが使用するときに注意することを,必要に応じて記載しています。
  「15. その他の注意」には,「臨床使用に基づく情報」や「非臨床試験に基づく情報」で,添付文書の他の箇所には載せていない重要な情報を記載しています。前者はヒトでの安全性や有効性に関して注意しておいたほうがよいかもしれない情報,後者は動物に投与した時に認めた毒性(副作用)で,ヒトではまだ発現していないが,注意しておいたほうがよいものについての情報です。
  「16. 薬物動態」には,服用した薬が血液中で最高濃度に達するまでに要する時間(tmax)とその最高血中濃度(Cmax),およびその最高血中濃度が半分に減るまでに要する時間(t1/2),ならびにその薬を分解する生体内酵素などの情報を掲載しています。これらは医師および薬剤師向けの専門的な情報で,投与する薬の量や投与回数を調整する時に役立つものです。
  「17. 臨床成績」には,薬を開発する際に実施した臨床試験で得た有効性や安全性の結果を記載しています。有効率(%)を記載している場合は,100人の患者さんが服用して何人に効果があったかを知ることができます。
  「18. 薬効薬理」には,薬の作用機序,すなわち薬の効果が現れるしくみや,その効果に関連する生体内物質の変化などの情報を記載しています。医師が患者さんに合う薬かどうかや,その薬の使い方を考える時に役立つ専門的な情報です。  
  「19. 有効成分に関する理化学的知見」には,薬の一般的名称,化学名,分子式,分子量,化学構造式,および性状など物理的および化学的情報を記載しています。  
  「20. 取り扱い上の注意」には,保存方法や,薬を取り扱う際の一般的な注意事項を記載しています。
  「21. 承認条件」以降「22. 包装」「23. 主要文献」「24. 文献請求先及び問い合わせ先」「25. 保険給付上の注意」および「26. 製造業者又は輸入販売業者の氏名又は名称及び住所」には,その該当内容を必要に応じて記載しています。  
以上が,医療用医薬品の添付文書の全貌です。薬店などで手に入る薬の添付文書より詳細で,医師や薬剤師向けの専門的な情報を載せていますが,用法・用量,副作用,および注意事項など,服薬に際して知りたいことがある場合は一般の方々にも役立つでしょう。
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