日本語の受身文 The Passive Sentence of the Japanese Language


 日本語の受け身表現の特徴
  日本語の受け身表現には,直接受け身と間接受け身があります。直接受身文は能動文の目的語が主語になるもので,英語の受動態に似ています。つぎの文を見てください。左の文は能動文で,その文の目的語である「血液検査」を主語にした右の文が直接受身文です。直接受身文では,能動文の主語(担当医師)が動作主となり「によって」という言葉で導かれています。
      担当医師は血液検査を実施した。 → 血液検査は担当医師によって実施された。 = 直接受身文
ただ,日本語でこのような表現をすることはほとんどないように思います。もし血液検査を文頭にもってきたいのでれば,日本語では以下のように表現することができます。
      血液検査は担当医師が実施した。
この文は「AはBが〜した」という構文で「は」が付いている「血液検査」は主題で,主語は「が」が付いている「担当医師」という構成です。これは日本語らしく自然な表現のように感じます(「は」と「が」についてはこちら)。
  つぎに,間接受身文についてです。間接受身文は動作の受け手ではないものが主語になります。つぎの文を見てください。
      彼は私の貴重なデータを盗んだ。 → 私は彼に貴重なデータを盗まれた。 = 間接受身文
左の文は能動文で,その文の目的語(動作の受け手)である「貴重なデータ」を主語にする代わりに,その持ち主の「私」を主語にした右の文が間接受身文です。このような「AはBを〜された」という間接受身文は,主語が何らかの被害や迷惑を受けたことを表す際によく用いるので「被害の受け身」や「迷惑の受け身」と呼ぶこともあります。このタイプの受身文はよく見かけるように思います。なお,この左の能動文は「私の貴重なデータは彼に(よって)盗まれた」という直接受身文にすることもできます。しかし,上述した直接受身文の例と同様に,日本語では不自然な表現のように感じます。「私の貴重なデータ」を文頭にもってきたければ「私の貴重なデータは彼が盗んだ」または「私の貴重なデータを彼が盗んだ」という能動文にするほうが日本語らしく感じます。ただ,直接受身文でなければ表現できないこともあります。つぎの文を見てください。
      血液検査は実施された。
これは血液検査を実施した人が誰かわからない場合に用いる,動作主のない直接受身文です。すなわち,血液検査を実施した形跡はあるけれど誰が実施したのかわからないという意味です。また「誰」かは知っているけど言いたくない,隠しておきたい,わざわざ言う必要はないというときにも動作主を記載しない直接受身文を使うことになります。ただし,このような文は「あいまいな文」ということになります。
  以上のように,日本語の受け身表現は2種類ありますので,その違いを理解して正しく使い分けること,また間接受身文以外は,できるだけ能動文に置き換えることが日本語らしい文章を書くための重要なポイントになります。
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